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2026.10.20

向坂くじらさん連載「そうでないものの美」 Vol. 07

詩人・小説家の向坂くじらさんによる連載、第7回目のテーマは「不潔なものの美」です。

EDIT: 美的編集部

美的編集部

美的編集部

2001年に創刊された美容専門誌『美的』(小学館)の編集部。「肌・心・体のキレイは自分で磨く」をキャッチフレーズに、タレント、モデル、カメラマン、美容家や美容ライターといった各分野のスペシャリストとともに、最新のビューティトピックを深く掘り下げた誌面作りがモットーです。2026年には創刊25周年を迎え、これまで積み上げた膨大な美容に関する最新の知見をもとに、美容に対して誠実なメディア運営に取り組んでいます。

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SOURCE: 美的 2026年11月号

2026年11月号

11月号

9月24日 ¥1,680

『美的』11月号は、「秋メイクは『盛れるベージュ』で品格映え!」という大特集。秋も深まる季節に、進化したベージュメイク…

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詩人・小説家

向坂くじら

Vol. 07/不潔なものの美

パッキン

それだのに

うちの蛇口の根っこには

もう 水がもれて

ぬるつきだしている

蛇口はうなだれてだまっている

こらえても こらえても

もれてくるのです というふうに

そばには二十三時の鏡

それからかみそり

名乗りでるみたいにばんざいしたら

もう わき毛のさきっちょ

わたしの

根っこからもれてくる

ぬるつき

こらえても

こらえても生きているのです

鏡のなかのわたしが踊ると

わき毛も踊った

どうして清潔であることと美しいことをともに「きれい」という言葉であらわせるのか、ということに、そういえばまだ納得していない。

清潔という意味での「きれいにしなさい」という言いつけを、わたしたちはよく聞かされる。どうして「きれいに」しないといけないかと言ったら、第一には、他人とともに暮らしていくためだろう。なにをもって十分「きれい」と認めるか、という基準だって、人びとのあいだで作られたものにすぎない。だからときには行きすぎたり、集団やルールが持つ力の、らんぼうな使い方と結びつくことだってある。それを美しさという、たったひとりの場所にも生まれうるものと同じ呼びかたをして、本当にいいのだろうか。そして、「きれい」であろうとするあまりに見過ごしてしまう美しさというものが、どこかにあるんじゃないか。

そんなふうに思いいたったのは、手を洗ったときだ。草むしりのあとだったから、爪と指のあいだにも、掌紋の細かな筋にも、土が詰まっていた。ハンドソープが水をふくんで、わあっと土色にふくらんだ瞬間、とり返しのつかない気持ちになった。あ。手のひらについた土のもようを、もっと見ておいたらよかった。いまなにか得がたい、そうだ、「きれいな」ものがあった気がした。けれど、もう遅かった。泡を流したときには、手はしらじらと「きれい」になって、そこにはもうなにもなくなっていた。それからしばらくのあいだは、自分がどろんこ遊びの好きな子どもだったことを、ぼんやりと思いかえして過ごしたのだ。

\過去連載もお見逃しなく!/

「そうでないものの美 」

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

EDIT: 美的編集部

2001年に創刊された美容専門誌『美的』(小学館)の編集部。「肌・心・体のキレイは自分で磨く」をキャッチフレーズに、タレント、モデル、カメラマン、美容家や美容ライターといった各分野のスペシャリストとともに、最新のビューティトピックを深く掘り下げた誌面作りがモットーです。2026年には創刊25周年を迎え、これまで積み上げた膨大な美容に関する最新の知見をもとに、美容に対して誠実なメディア運営に取り組んでいます。

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イラスト: たなかみさき

構成: 渋谷香菜子

SOURCE: 美的 2026年11月号

2026年11月号

11月号

9月24日 ¥1,680

『美的』11月号は、「秋メイクは『盛れるベージュ』で品格映え!」という大特集。秋も深まる季節に、進化したベージュメイク…

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