健康・ヘルスケア
2018.10.24

女医に訊く#34|ストレスも理由に?顎関節症の原因と症状を教えてください

34
朝起きると顎が痛い、口が開きにくくなった、口を開け閉めすると耳の横がポキポキ鳴る…などの経験をしたことはありませんか? これらは顎関節症という症状の可能性があります。重症化すると手術が必要となることもある顎関節症について、歯科医の内藤聡美先生に教えていただきました。

顎関節症の主な原因はストレスや噛み合わせの悪さ

顎関節症の原因は、精神的ストレスが関わっているといわれています。わたしたちは過度の精神的ストレスが加わると、無意識のうちに歯をグーッと食いしばることがあります。その力は成人でおよそ自分の体重の2倍以上の重さを引き上げられるほど。そのため顎関節の緊張状態が積み重なると、顎関節症が本格化し、顎の痛みや変形、顎の動き方の偏位、歯のすり減りや欠け、歯茎痩せや出血を引き起こす可能性があるのです。

「ほかにも、噛み合わせや高さが合っていない詰め物や差し歯が入っていると、そこだけ強く噛み締めたり、歯ぎしりをしたりして顎関節症を起こすことがあります。ワイヤー矯正の治療中も、噛み合わせがどんどん変わってくるので、一部が強く当たって一時的に顎関節症になることがあります」と内藤先生。

顎関節症は放置すると顎や歯だけではなく、頭痛や肩こり、首のコリ、耳鳴りやめまい、体調不良など全身にも影響を及ぼすこともあります。気になったら、痛みはなくても予防や対処を早めに行いましょう。

頭や顎が痛くなったり、歯が削れたりすることも!

「顎関節症は自分で気づく人が多いですね。例えば、咀嚼に使う筋肉には、側頭筋・咬筋(こうきん)・内側翼突筋(ないそくよくとつきん)の3つがあるのですが、側頭筋の緊張状態が続くと頭痛を感じますし、咬筋の緊張状態が続けば顎が痛くなってきますから、自覚されて相談しにいらっしゃいます」と内藤先生。先生によると、口の中を見ると、顎関節症になりやすいかどうかがわかるのだそう。

「歯をよく食いしばる方は、頬の内側の頬粘膜(きょうねんまく)や舌を噛んでしまうことも多いため、頬の内側や舌の粘膜がギザギザになり、波打っています。頬や舌の表面が波打っていると、より噛みやすくなりますから、負のスパイラルに陥る可能性は高いですね。また、食いしばる度合いが強い方は、歯が削れて真っ平らになっていることがあります」(内藤先生)

ちなみに、虫歯ではないのに歯が痛いのは、食いしばりや歯ぎしりが原因の可能性もありますが、知覚過敏、または歯周病の可能性もあります。自己判断はせずに、歯科医に診てもらいましょう。

歯の食いしばりに気づいたら、すぐに力を抜きましょう

顎関節症の治療には、マウスピースを使ったスプリント療法が用いられます。無意識に食いしばりや歯ぎしりを行ってしまう仕事中や就寝時、スポーツをする際などに、歯型に合わせて作成した透明のマウスピース型のトレーを上下の歯全体に装着することで、強く偏った力が歯や顎にかかるのを抑止します。

また、最近は無毒化したボツリヌストキシンを咬筋という大きい筋肉に注射することで、咬む筋肉の力が弱めて、つらい症状を緩和させる治療を用いることもあります。個人差がありますが、その効果は1週間前後で感じられ、およそ6カ月間持続するといわれています。

「ストレスはなくても、集中するときに歯を食いしばる方もいらっしゃいます。歯の食いしばりは、気づいたときに離すことを習慣化することで避けられますから、普段からリラックスすることを心がけて顎関節症を予防しましょう」(内藤先生)

教えてくれたのは・・・

%e6%ad%a3%e6%96%b9%e5%bd%a2%e5%86%85%e8%97%a4%e8%81%a1%e7%be%8e%e5%85%88%e7%94%9f%e3%82%a2%e3%82%a4%e3%82%ad%e3%83%a3%e3%83%83%e3%83%81
歯科医
内藤聡美先生
南青山矯正歯科クリニック副院長。日本審美歯科学会所属。日本大学歯学部卒業後、亀田総合病院歯科センター勤務を経て、2016年から現職。得意な治療は、ケンライン(デジタルで仮想的に歯を動かしそれを実践していくマウスピース矯正)、セラミック矯正、歯肉整形(ガミースマイル)
■南青山矯正歯科クリニック https://ortho-dontic.net/

文/清瀧流美 撮影/フカヤマノリユキ

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

この記事をシェアする

facebook Pinterest twitter

関連記事を読む

あなたにおすすめの記事