食・レシピ
2009.4.23

西の国から美的通信#26 五島の旅(3):小値賀島で学んだ“かんころ餅”作り

A:これが「かんころ棚」。季節になると、この上にスライスしたサツマイモが所狭しと並ぶそうです。
B:かんころを水で戻しているところ。
C:出口からニョロニョロとペースト状になったかんころが出てきます。 D:餅つき機に蒸したてのお餅を入れます。
E:砂糖、生姜、ゴマを入れて混ぜているシーン。
F・G:「こうやるのよ!」山田さん自ら教えてくれました。

みなさん、かんころ餅をご存知ですか? 簡単にいうと、サツマイモと餅米が合体したようなもので、冬季の保存食として長崎・五島列島の人たちに昔から愛されてきた郷土料理です。低温でも硬くならないのが特徴でそのままでもおいしくいただけますが、薄く切って両面をほんのり焦げ目が付く程度に焼いて食べると絶品。周囲はカリッとしているのに、中はふんわり。サツマイモの風味とお餅のやわらかさが絶妙にマッチして、何個でも食べられます。

一度口にしたその日から、大好物に昇格したかんころ餅でしたが、これはお土産売場で買うもの! だと思っていました。ところが、五島に行くと地元の方は手作りなさっているらしい。前回、前々回と2回にわたってご紹介した椿油もそうでしたが、ほんの数十年前まで、生活に必要な食べ物はほとんど手作りしていたという五島列島。自給自足ができる島とおっしゃるのも納得でした。

小値賀島で民泊させていただいた山田さんも「食費はほとんどかからないのよ。みんな持ちつ持たれつ、野菜が採れたから…魚を釣ったから…と食材をいただく場合も多いの。でもね、冠婚葬祭費はかかるわね。だって、みんな顔なじみで親戚みたいな感じだから」。なるほど! そんな島事情を伺いつつ、私たちが体験プログラムとしてトライしたのは郷土料理。本当は芋まんじゅうとアジのすり身揚げ(前回でご紹介済み)をご用意いただいていたのですが、山田さんとお話しているといつもはかんころ餅を作っているとおっしゃる。「だったら、私たちもかんころ餅作りを体験させてください!」と急遽お願いしたのでした。

いきなりだったにもかかわらず、手際よく収納棚や冷凍庫からサツマイモを薄く切って乾燥させたもの(これをかんころという)と、冷凍したお餅を出してきてくれた山田さん。「サツマイモはね、薄く切って湯がいて天日干しするの(写真A)。するとサツマイモならではの甘みの旨みが濃縮されるんです」。そういって、乾燥したサツマイモを水で戻し(写真B)、蒸しはじめました。その間、冷凍していたお餅をザクザク切って蒸す準備をしておきます。本当はつきたてのお餅などを使うそうですが、今回は突然だったこともありお正月に作り置きしていたお餅の冷凍したものを使いました。

とってもお料理が上手な山田さん。便利な調理器具を使って合理的に進めます。まずは、蒸したかんころを挽肉とかも作れそうなフードミンチの中へ次々と入れていきます。すると、スイッチ一つでニュルニュルとペースト状になったサツマイモが出てきました(写真C)。続いて登場したのは、餅つき機。この中にペースト化したサツマイモと蒸したてのお餅を入れて(写真D)、しゃもじで馴染ませながらコトコト、コトコト。臼と杵を使って、ペッタンペッタンついていた昔に比べたらなんと便利なことか! また、学んでいる私たちも臼や杵を使って教えてもらうよりは、現代的な器具を使ってくれた方が、自宅でも作ることができるのでありがたい限りでした。

餅つきの中が馴染んできたところへ、摺りおろした生姜、砂糖、ゴマを入れていきます。これまたしゃもじ馴染ませながらコトコト、コトコト(写真E)。聞くところによれば、何をどのくらい入れるのかは各家庭によって違うとか。島によっては、生姜の絞り汁を入れたり、生姜そのものを入れずに作るところもあるそうです。ゴマはちょっと炒って半擦りにした方がより風味も出るそうで、やはり料理ってちょっとしたひと手間が大事なのよね〜と改めて思い知らされました。

全部馴染んだところで、いよいよ打ち粉を使って丸めていきます(写真F・G)。通常は棒状のものが売ってありますが、今回は初心者の私たちに合わせて手で丸めることにしました。途中、出来たてをひと口。サツマイモと生姜の風味があいまって口の中でやさしくとろけます。ん〜おいしい! 両面を焼いて食べるものうまいですが、出来たてホヤホヤのかんころ餅もまた最高です。

最後にレシピを簡単にまとめておきますね。

ー 材料と作り方 ー
●かんころ 1kg
●餅 600g
●砂糖 600g
●生姜、ゴマはお好みで!
●かんころ作り:毎年秋頃、サツマイモの収穫時にかんころ作りが始まります。1cm未満にスライスしたサツマイモはさっとゆでで、風通しのよいかんころ棚に乾して、カラカラになるまで天日干し。ちなみに、この棚では切り干しだいこん作りにも活躍しているそうです。

●かんころを水で戻して、蒸す。
●フードミンチに入れてペースト状に。
●餅つき機の中にペースト化したかんころと、蒸したてのお餅をいれて馴染ませます。
砂糖、擦り生姜、ゴマを入れて、馴染ませます。

●くっつかないように打ち粉を使いながら、形を整えたらできあがり。

<取材協力>
ルアナ
http://www.luana-salon.com/

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