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2016.11.8

【大高博幸さん連載 Vol.367】 『 マイ・ベスト・フレンド 』『 誰のせいでもない 』『 雨にゆれる女 』 試写室便り No.126

(C)2015 S FILMS(MYA) LIMITED
(C)2015 S FILMS(MYA) LIMITED

あなたが いない 明日を、
あなたが くれた 強さで 生きる。

女性同士の深い友情を、
笑顔と涙で つづる 感動作!

マイ・ベスト・フレンド
イギリス / 116分
11.18 公開/配給:ショウゲート
mybestfriend.jp

【 STORY 】 幼い頃からの大親友で、ファーストキスから初体験まで、お互いの全てを知っているミリー ( トニ・コレット ) と ジェス ( ドリュー・バリモア ) 。この友情は 何も変わることなく、永遠に続いていくと信じていた。仕事とオシャレが大好きなミリーは 夫が立ち上げた会社の PR 担当として成功し、ふたりの子どもにも恵まれ、幸せな生活を送っている。ジェスも また、心優しいパートナーと めぐり会い、平穏に暮らしていた。
ところが ある時、ミリーに乳ガンが見つかり、同じころ ジェスの妊娠が発覚する。愛する人との子どもを切実に望み、不妊治療を続けてきたジェスは、母となる喜びを 誰よりもミリーと分かち合いたいと願う。しかし、ミリーのことを思うと、どうしても打ち明けられない。相手を思うがゆえに 言葉にできないことが増えていく、ふたりの 友情の ゆくえは――。 ( プレスブックより )

試写招待状の画像 ( チラシと同一 ) から「 中途半端な 甘口 友情物語の可能性あり 」と、自分に言い聞かせた上で観賞。But、それは杞憂でした。本作は、揺るぎない、羨ましいほど強い信頼の絆で結ばれた、真の親友同士の物語。苦境に置かれてもユーモア ( 互いを思いやるがゆえのユーモア ) を忘れないミリーとジェスの、正に「 笑顔と涙でつづる感動作 」です。
主演は、T・コレットと D・バリモア ( 初共演 ) 。監督は『 トワイライト 』『 赤ずきん 』の キャサリン・ハードウィック。製作は、日本でもスマッシュヒットを記録した 愛すべき佳作『 おみおくりの作法 』 ( 通信 266 ) の クリストファー・サイモン。

前半は スケッチ風な場面が割と長く続き、中盤辺りからドラマティックに変調するという構成 ( それでも ミリーとジェス + ふたりの夫たちの 前向きな言動により、暗くなりすぎるコトは ありません ) 。
詳しくは敢えて書きませんが、急に産気づいたジェスが どうにか無事に出産するまでの シークエンス ( 相当なスリルと溢れる愛情、そして人間味に満ちている ) が非常に感動的で、誰ひとり、涙なしに観るコトは できないでしょう。

キャストは 全員、真剣満気の好演を見せています。
中でも特筆すべきは、ミリー役の T・コレット。彼女は ルックスを含め、そのユニークな個性が 良くも悪くも 前面に出てしまうタイプの女優ですが、今回は実力をフルに発揮。コントロール力と爆発力を持って、役の生きざまを完璧に演じきっています。童顔の D・バリモアとは 実年齢に 3 歳の差がある上に ドライスキンでもあるコレットは、バリモアとは同級生に見えにくいという難点を持つものの、それは この際、問題外。ふたりの息も、100% 合っています。
ドミニク・クーパー ( ミリーの夫役 ) と パディ・コンシダイン ( ジェスの夫役 ) は、僕が知る限り、今までになかったほどの 適役・好演。特に良かったのは、彼らが互いに「 セックスは控えている 」という会話を 真面目にしているシーンです。突然 クーパーが、意味深長な面持ちで「 いっそ 俺たちが寝るほうが、話は早くないか? 」と コンシダインの体に触れながら言い出し、ほんの一瞬の間を置いて「 その言葉を待っていたんだ 」と コンシダインが身を乗り出す……。この ふたりの〝 冗談 〟は、実に大爆笑モノでした。
また、ミリーの母親で 現役の女優でもあるミランダ役の ジャクリーン・ビセットは、ミリーの切実な願いを叶えるために、断固として、しかも いとも簡単に 一世一代の芝居を打つという見せ場で、なんと コメディのタッチを伴いながら、観る者を感涙させます。それは 彼女の輝かしいキャリアがモノを言う、彼女が演じているからこそ 見事に成功した場面です。
その他、アクメッドとかいう名のタクシー運転手 ( 俳優名は不明 ) の ちょっとした台詞に、人生の機微が感じられたコトも、僕は忘れられません。

できれば 親友と一緒に観てください。But、これは 男性陣にも 一見をオススメしたい映画です。
P.S. エンドロールの最後に、平原綾香さんが唄う「 STAR 」 ( 日本版テーマソング ) が流れます。日本語の歌唱であるにも拘らず 異和感はなく、むしろ しっくりと なじんでいて、胸に響きました。

 

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©2015 NEUE ROAD MOVIES MONTAUK PRODUCTIONS CANADA BAC FILMS PRODUCTION GÖTA FILM MER FILM ALL RIGHTS RESERVED.

すべては雪の日に始まった。

巨匠 ヴィム・ヴェンダースが描く、
揺れ動く感情のランドスケープ。

誰のせいでもない
ドイツ、カナダ、フランス、スウェーデン、ノルウェー合作 / 118 分
11.12 公開/配給:トランスフォーマー
transformer.co.jp/m/darenai/

【 STORY 】 真っ白な雪に包まれた カナダ、モントリオール郊外。田舎道を走る一台の車。突然、丘から ソリが滑り落ちて来る。車は ブレーキを きしませて 止まる。悲劇は避けられたかに思えたが……。
誰のせいでもない一つの事故が、一人の男と三人の女の人生を変えてしまう。車を運転していた作家のトマス ( ジェームズ・フランコ ) 、その恋人 サラ ( レイチェル・マクアダムス ) 、編集者のアン ( マリ = ジョゼ・クローズ ) 、そして ソリに乗っていた少年の母 ケイト ( シャルロット・ゲンズブール ) 。誰のせいでもない。優しく聞こえる その言葉の奥で、彼らの感情は揺れ動く。誰も責められない。誰も憎めない。苦しくて、切ない感情を抱きながら。これは、彼らの 12 年にわたる物語。 ( プレスブックより。一部省略 )

〝 罪悪感と赦し 〟というテーマを、時に繊細に、時に大胆に、登場人物たちの心の奥底を覗き込むように描写した サスペンスフルな心理ドラマ。『 パリ、テキサス 』『 ベルリン・天使の詩 』『 ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ 』等で知られる W・ヴェンダース監督が、7 年振りに完成させた劇映画です。

ストーリーが展開する上で 重要な部分を、具体的に映し出したり 台詞で説明したりするコトを意図的に避けて、観客の想像力と判断力に 半ば委ねる演出が施されているため、「 思わせぶりな分かりにくい映画 」と感じる方も少なくはなさそう。また、登場人物たちの心の内を 主に表情から読み取る必要もあるため、集中力の維持が不可欠。比較的スローなテンポの中に 突き放されたかのように捉えられている人物たちは、僕が初めて観た頃の イングマール・ベルイマン監督作品中のキャラクターたちを想い出させもしました。

しかし、うっすらと鳥肌が立つような 不気味なシーンを経た後に〝 赦し 〟の光が差し込む結末は、全ての or 多くの観客の心に潜んでいる 罪悪感 or まとわりついて消えない わだかまりのようなモノを切り崩し、取り払うための道しるべになるのでは と感じました ( 本作の原題は『 EVERY THING WILL BE FINE = 全ては うまくいく 』です ) 。

トマス役は『 127 時間 』 ( 通信 60 ) 以来 久し振りに観た J・フランコで、味のある魅力的な 大人の男になっています。ケイト役の C・ゲンズブールは、シンガーソングライターの セルジュ・ゲンズブールと 女優の ジェーン・バーキンとの娘。サラ役は『 スポットライト 』 ( 336 ) でアカデミー賞®助演女優賞にノミネートされた R・マクアダムス。アン役は、カンヌ国際映画祭での受賞歴を持つ M = J・クローズ。

本作は 3 D 映画として撮影され、日本では 2 D 版と 3 D 版で上映される予定 ( 僕が観たのは 2 D 版 ) 。3 D 版は、飛び出す絵本的な映像とは異なり、人間が両の眼でモノを見ている立体感に近い状態とのコト。ヴェンダース監督は「 本作では多くのコトがキャラクターの内部で起こる。その心の深い奥こそ、3 D で語るに ふさわしい 」と述べています。僕は 3 D 版で観なかったコトを、少し後悔しているところです。

 

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© 「雨にゆれる女」members

過去を隠し 別人として生きる男。
その前に 突然 現れた 謎の女――。
お互いを、愛しては いけないばすだった。

雨にゆれる女
日本 / 83 分
11.19 公開/配給:ビターズ・エンド
bitters.co.jp/ameyure

【 STORY 】 本名を隠し、〝 飯田健次 〟という別人として ひっそりと暮らす男。人との関わりを拒む 彼の 過去を知る者は、誰もいない。
ある夜、突然 同僚が家にやってきて、無理やり健次に女を預ける。謎の女の登場で、健次の生活が狂いはじめる。なぜ、女は健次の前に現れたのか。そして、なぜ、健次は別人を演じているのか。お互いに本当の姿を明かさないまま、次第に惹かれ合っていく ふたり。しかし、隠された過去が明らかになるとき、哀しい運命の皮肉が ふたりを待ち受けていた――。 ( プレスブックより )

パリを拠点に、映画音楽からエレクトロニックミュージックまでを手掛け、幅広く世界で活躍する半野喜弘 ( はんの よしひろ ) の〝 渾身 〟の監督デビュー作。
アルコールランプの炎のアップ、貨車が停っている夜の遠景、そして健次のアップへと続くプロローグから、この映画は ひとつひとつの美しく深いカットと、その繋ぎ ( 編集 ) のインパクトが 静かでいて鮮烈。全篇を通じて 構図・色調 ( 色相・彩度・明度 ) のコントラスト、照明の技術が並外れて素晴らしく、僕は息を潜めて画面に観入りました。サスペンスフルなドラマとして、これほど丁寧に 細心の注意を払って撮られた映画は、今まで なかったと思います。
内容は 相当 風変り or ユニーク。リアルであると同時に シュールレアリズム ( 超現実主義芸術 ) や アヴァンギャルド ( 前衛芸術 ) の要素を感じさせ、ほとんど強引とも言える 構成・展開に 驚かされるものがありました。

こゝに描かれているのは、人間の心の襞 ( ひだ ) 、罪の意識から逃れられない人間の 激しい苦しみと悲しみ。それが安定した旋律の中に悠然と描かれていて、不思議な感情を呼び起こします。
ストーリーに関しては、予備知識は 最小限に留めて観るほうが よさそう。また、映画を観ながら「 ありえない話 」などと必ず考えてしまうタイプの方々には、不向きな映画かもしれません。

主演は、今まで豪快なイメージが強かった青木崇高 ( あおき むねたか ) で、優しさを秘めた孤独な男を、説得力と迫力を持って 繊細に演じています。共演は、TV ドラマ・映画・舞台にと幅広く活躍している大野いと。特に眠っている顔と病気で横たわっているシーンでの脚線の美しさには、ハッとさせられました。
最も印象的だったのは、健次が 子供時代の話を、大野いと演ずる理美に語るシークエンス、及び 海辺でのラストのシークエンス。
ひとつだけ とても気になったのは、聞き取れない ( 聞き取りにくい ) 台詞が、全篇中に 3 箇所ほどあったコト ( 音楽に かき消されていたワケでは ありません ) 。

脚本・編集・音楽・監督を 全て担当した半野喜弘は、非凡な才能の持ち主。今後も ひとり四役で活躍してほしいです。
P.S. 公開は 11.19、テアトル新宿の 〝 レイトロードショー 〟でのスタート。上映時間等は、www.ttcg.jp、または 03-3352-1846へ。

 

 

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ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸さんの 肌・心塾
http://biteki.com/beauty-column/ootakahiroyuki

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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