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2009.11.30

大高博幸の美的.com通信(5)DVD『ゼロの焦点』vs.新作映画『ゼロの焦点』

映画の感動が呼び起こす、顔つき&心理の変化!?
今回は、DVD『ゼロの焦点』(松竹映画、1961年度作品)vs.新作『ゼロの焦点』(東宝映画、ロードショー中)、壮大なスケールで描かれた感動のミステリーについて。

映画を観て泣いたり笑ったり感動したり…その後、顔つきが違っている自分を発見したという経験、誰にも必ずあるはずですが、僕の中で驚くほど強烈だった最初のそれは、中学時代、松竹の『ゼロの焦点』を観た時でした。
それまでは大抵「洗い清められたような顔してる」といった感じでしたが、この時は不思議なほど大人びた顔になっていた…。何故か? “連続殺人犯”という許しがたい登場人物に、不覚にも同情 or 共感 or 愛情のようなモノを激しく感じてしまったから、だったんです。

そして幾つかの重要な場面(これから観る人のために詳しくは書けない)については、画面の構図から人物の位置関係、会話のテンポ、ショットの積み重ねまで、鮮明に脳裏に焼き付けてしまったのでした…。

その『ゼロの焦点』が原作者・松本清張(推理小説の巨匠)の生誕百年を記念してDVD化されたと知り、早速入手。一度観たというのにドキドキしながらプレーヤーにセット、のめり込むように2度目の鑑賞。記憶から抜け落ちている場面や登場人物もありましたが、重要な場面に関しては焼き付け通り…。しかし昔観た時よりも、さらに深い感動を味わうコトができました。
これは僕を1段、大人にしてくれた映画です。何故ならそれ以降、自分自身を含め、すべの人に内在する“目には見えない何か”、意識 or 無意識下に内在する“過去の何か”が、その人の言動や感受性に影響を与えているのかもと、いちおう考えてみるだけの洞察力+寛容性のようなモノが自分の中で育まれたからです。

それはともかく、この作品のスタッフ&キャストの充実振りといったら、当時の日本映画界の厚みを感じさせるに十分。また、この少し前まで芸能雑誌の表紙を飾っていた人気女優・高千穂ひづる&有馬稲子(共に宝塚歌劇団出身)が、それまでの出演作にはなかったキャラクターを見事演じ切っているコトにも改めて感動しました。特にラスト近くのフラッシュバック、車中での二人のやり取りのシーンには、絶望的な哀しみと捨て切れない優しさ&過去と現在とこれから先が一気に合流しているような凄さがあって、一生忘れられない名場面となっています。

DVDを観た翌日、有楽町で新作の『ゼロの焦点』を鑑賞。こちらには皆さんご存知のスター&バイプレーヤーが多数出演。撮影はカラーで物語の展開も今風、横溝正史モノのタッチも見え隠れする演出。松竹版とは脚色が相当異なっている点も興味深い要素でした。
そして帰宅後、またDVDを観てしまった僕(笑)。正直言って絶対的に好きなのは松竹版のほう。でも2作とも観て、より深く理解できたコトが多々あります。

あなたはどちらの『ゼロの焦点』を観たいですか? できれば、後先はどちらでもかまいませんので、2作とも観てほしい。そして自分の顔つき&心理的変化をも見逃さないでいただけたらと思います。

◆DVD&BOOK/松本清張傑作映画ベスト10 [02]ゼロの焦点(¥3,465・小学館)書店にて発売中
サイト:http://www.shogakukan.co.jp/seicho/
【DVD】モノクロ95分(松竹映画/1961年度作品)
【BOOK】A5判、32ページ

◆映画/新作『ゼロの焦点』(東宝映画/カラー作品)全国東宝系劇場にて上映中
サイト:http://www.zero-focus.jp/

※価格表記に関して:2021年3月31日までの公開記事で特に表記がないものについては税抜き価格、2021年4月1日以降公開の記事は税込み価格です。

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