大高博幸さんの 肌・心 塾
2014.7.9

大髙博幸の美的.com通信(236) 7月のオススメ 『ジゴロ・イン・ニューヨーク』ほか 試写室便り Vol.72

ⓒ 2013 Zuzu Licensing, LLC. All rights reserved
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失業中の本屋の元店主と、イケてない花屋のバイト男が、ジゴロを開業!?

ニューヨークの街に しあわせをばらまく、小粋で 笑えて、心温まる物語。
ジゴロ・イン・ニューヨーク』 (アメリカ映画/90分/映倫 PG-12)
7.11 公開。gigolo.gaga.ne.jp

【STORY】 ブルックリンの本屋店主(ウディ・アレン)は、代々続いた店が閉店に追い込まれ 苦悩の日々。そして思いついたのは、花屋のバイトの友人(ジョン・タトゥーロ)をジゴロにして、男娼ビジネスをスタートさせるという迷案?! 戸惑う友人を必死で口説き、ジゴロ業を開業するやいなや、意外にもクールでダンディなジゴロは 裕福な女性たちを たちまち夢中にさせていく。ところが ジゴロが ある未亡人(ヴァネッサ・パラディ)と恋に落ちてしまい…。(試写招待状より)

ジゴロ=美形の色男という お約束を 完全に無視した本作は、全米の限定公開作品として 今年第2位となる大ヒットスタートを記録、「失敗も成功もあるからこそ 人生は素晴らしい」と語りかけてくるような 一種のコメディです。モチロン、単純な“おふざけコメディ”なんかじゃなくて、観た人たちの “これから先にある幸福”と、どこかで必ずリンクするはずのコメディ! 面白いのに 程良く しっとり、程良く せつなくて、登場人物たち全員が いとおしく思えてくるプレシャスな映画です。

監督・脚本・主演(ジゴロになるフィオラヴァンテ役)は ジョン・タトゥーロ。奇をてらった所が全くない、どちらかというと淡々とした作風でありながら、ココまで面白く興味深く観せるなんて、彼はタダ者ではありません。作品全体にシャレっ気があるのに 気取りはゼロ、登場人物は 善人ばかりなのに 偽善的な匂いもゼロという、実に気持ちの良い 愛すべき内容でした。

タトゥーロ演ずるフィオラヴァンテは、本質的に感性が並外れて豊かで、マナーはヴェリージェントル、女性の気持ちを尊重できる男の中の男。そのため、
顧客第1号となる皮膚科医 パーカー女史(シャロン・ストーン)は、才色兼備&ヴェリーリッチで怖いモノなしのはずだというのに、彼に会うと間もなく、意外にもナイーヴでシャイな一面を さらけ出します。
また、厳格な戒律の下で生きている正統派ユダヤ教徒の未亡人 アヴィガル(ヴァネッサ・パラディ)は、背中だけのオイルマッサージを受けながら涙をこぼし、後日のデートの場面では、「あなたには自分を隠さずに見せられる。それだけで十分すぎるほどよ」と告白します。
要するに彼は、女性の心を解き放つだけの 人間的・男性的魅力の持ち主なのです。

本作は魅力的な場面の連続で成り立っていますが、僕が非常に驚き、かつ感動したのは、パーカー女史(シャロン・ストーン)+ 快楽追求派のレズビアン:セリマ嬢(ソフィア・ベルガラ)+ フィオラヴァンテの 3P セックスシーンでした。
プレイが始まって間もなく、できなくなってしまうフィオラヴァンテ。「ン? 私たちのコト、キライなの?」と問うセリマに、「いや、そうではないが…」とフィオラヴァンテ。その瞬間、「あー、あなた、恋をしているのね?」と優しくツブやくパーカー女史。申し訳なさそうに うなだれるフィオラヴァンテ。そして、怒り出すかと想いきや、「Oh、ビューティフォー! なんてステキな顔なの❤❤❤」と瞳を輝かせるセリマ…。
この場面、アメリカの上映館では、おそらく大爆笑と大拍手が 同時に巻き起こっただろうと想像します。この場面の三人の やり取りは、もう 最高でした。 いざという最中にも拘わらず、こんな言葉を発するコトのできるパーカー女史とセリマ嬢に、僕はノックアウトされました。僕が女性だったとしたら(3Pなんて しないけれど)、彼女たちを見習いたいと思った程です。

ジョン・タトゥーロ × ウディ・アレンの名・珍コンビ、シャロン・ストーンの一流のソフィスティケーション、舌っ足らずにフレンチ風の英語を しゃべる ヴァネッサ・パラディの愛らしさ(彼女も、もう40代)、さらに 幼い頃から ずーっとアヴィガルに思いを寄せてきた ユダヤ教区パトロール員のドヴィ役:リーヴ・シュレイバー以下、全員が非の打ちどころのない好演技。
心地良い独特のテンポとリズムを引き立てるかのように、絶妙なタイミングで流れてくるジャズの名曲の数々にも、うっとりさせられるコト 請けあいです。

素敵な大人の女になるために、そして少々オーバーに聞こえるかもしれませんが、日々の幸福を かみしめるコトのできる豊かな人間になるためにも、ぜひ観てほしい作品です。特に、何から何まで頭で考えようとしてしまうタイプの方には、絶対 オススメ!

 

uzumasa
©ELEVEN ARTS / Tottemo Benri Theatre Company

日本映画を陰で支え、「斬られるため」に生きる俳優「斬られ役」。
5万回斬られた男・福本清三 映画初主演。
京都・太秦を舞台に描く「斬られ役」の“今”をめぐる感動の物語。

どこかで誰かが見ていてくれる…
太秦ライムライト』 (日本=アメリカ合作映画/104分)
7.12 全国公開。uzumasa-movie.com

【INTRODUCTION】 華やかな「ライムライト」を浴びることなく、スターの陰で「斬られ役」を演じ続けて55年。日本一の斬られ役・福本清三が 今回、満を持して初主演を務める。
斬られ役の香美山(福本清三)に殺陣の指導を仰ぎ、スター女優への階段を駆け上がるヒロイン さつきには、世界武術選手権大会優勝者の山本千尋を抜擢。本格映画初出演ながらも 見事な立ち回りを披露する。松方弘樹、小林稔侍、本田博太郎、萬田久子、合田雅吏、栗塚旭など 太秦ゆかりのスターたちも出演。
太秦を愛する役者とスタッフたちが、「斬られ役」の現在をめぐる人間ドラマを哀切たっぷりに描く、京都・太秦でしか描けない、“日本人の心の物語”。(試写招待状より。一部省略)

チャップリンの後期の名作『ライムライト』(1952)をモチーフにしたという劇映画。70歳を超えた『斬られ役』の俳優:香美山が、駆け出しの女優に“太秦城のお姫様”の面影を感じて殺陣の稽古をつけ、一人前の女優としての道を踏み出させる という話を軸に展開します。

僕が『ライムライト』を観て感動したのは 中学生か高校生の時でしたが、今回『太秦ライムライト』を観て 芸人の世界と時の流れの厳しさを痛感させられたのは、僕自身が歳を重ねたせいなのかも…。そして十代で観たチャップリンの『ライムライト』については、半分も理解できていなかったのかも…と思わされました。それは そうとして、香美山と さつきの師弟関係は、チャップリン演ずる老道化役者と クレア・ブルーム演ずる若く美しい踊り子に、当然ながら重なって見えました。

ひとつ、読者の皆さんに気にとめてほしいのは、撮影所の近くで小料理屋を開いている元太秦女優:美鶴(萬田久子)の “あいづち”の打ちかたです。古参の撮影所連中の話の多くには「そう…」とだけ答え、余分な言葉は決して発しない。しかし 青二才の虫の好かない話に対しては、「うるさい!」と一喝して黙らせる…。そうした彼女の主義・姿勢には 見習うべきモノがあります。「うるさい!」は、そのまゝ真似しないほうがいゝにしても です。
P.S. 香美山を支え続ける太秦の所長役で、本田博太郎が人間味あふれる素晴らしい演技を見せています。不精っぽく見えるクチヒゲを生やしてはいても、その顔の絶対的な美しさに、僕は惚れ直してしまいました。

 

チョルベン
© 1964 AB SVENSK FILMINDUSTRI ALL RIGHTS RESERVED

愛さずには いられない
スウェーデンの ブサかわ代表
チョルベンが やってきた!
なまいきチョルベンと水夫さん』 (スウェーデン映画/92分)
7.19 公開。www.suifusan.com

【STORY】 ここはスウェーデン、避暑地のウミガラス島。
大きな笑顔と大きな おしり。ときに大人も たじたじとなる少女らしからぬ少女 チョルベンは、愛犬“水夫さん”と いつも一緒。ある日 チョルベンは、漁師からアザラシの赤ちゃんを もらいます。モーセと名付けた そのアザラシを、友だちのスティーナやペッレと一緒に飼い始めますが、モーセに夢中のご主人様に 愛犬の水夫さんは寂しそう。そんなとき、アザラシが高値で売れると知った漁師は、チョルベンにあげたアザラシを奪い返そうとし、さらには水夫さんも ある事件に巻き込まれ…。はたしてチョルベンたちは アザラシの赤ちゃんを守り、水夫さんを救うことが できるのでしょうか?! (宣伝用チラシより)

スウェーデンの人気児童文学作家:アストリッド・リンドグレーン女史の「わたしたちの島で」を映像化した作品です。製作は1964年。それから50周年に当たる今年の夏、日本での公開が初めて実現するコトになりました。

画面は’60年代風の鮮明なフルカラー。“春の歌”と共に始まり、ハチ切れそうな赤いホッペのチョルベン、すきっ歯のスティーナ、やせっぽちのペッレ、それに セントバーナード犬の水夫さん、アザラシのモーセ、ペッレの愛犬:ユムユム、うさぎのヨッケetcが続々登場。子供らしい正義感、思いやり、勇気あふれる行動等が、動物愛護の精神と共に描かれています。

ひとつ残念に感じたのは、日本語に吹き替えられていないコト。スウェーデン語の台詞を 日本語字幕で読みながら 画面を目で追う…というのは、小学校低学年ぐらいまでの児童たちには、かなりタイヘンそう。今回は児童文学ファンの大人や児童教育に携わる方々のための公開、というコトなのかもしれません。

P.S.1 僕は サマーハウスのシンプルでスマートなスタイル(特にキッチンの様子)に 目を奪われました。あんな家での暮らしは、今の僕にとって 憧れです。
P.S.2 ラストのエンディングタイトルが終って 劇場内が明るくなるまで、スクリーンから目を離さずにいてください。エンディングタイトルの間にも、愛らしい小さなドラマが映し出されるので、そこまで しっかり観届けなければ、損をしてしまいますよ。

では、また近いうちに!

 

 

ビューティ エキスパート
大高 博幸
1948年生まれ、美容業界歴47年。24歳の時、日本人として初めて、パリコレでメークを担当。『美的』本誌では創刊以来の連載「今月のおすすめ:大高博幸さんが選ぶベストバイ」を執筆。
■大高博幸の美的.com通信 https://www.biteki.com/article_category/ohtaka/

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